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国立大学の教育学部附属中学校の研究授業を見に行くと、必ずといってノートではなく、プリントで授業をしている。興味があったので、附属中の先生たち数名に「附属中はなぜ、ノートは使わずにプリントなんですか?」と質問をしてみました。そうすると、いくつかの理由を教えてもらいました。
- 教育実習生が来るので、学習する内容が前後するから、整理しやすいようにプリントにしている
- 教科書だと勝手に問題を解き始めてしまうから、題材に集中させるため
- 授業の展開次第で発展的な内容を追加しやすくするため
質問の答えは以上のようなものでした。教えてもらうと納得できる理由ばかりでした。また、「A4の紙代はどうしているのか」と聞いてら、年度初めに集金(400円~500円)していると教えてもらいました。真似をしてみようと、プリントで授業することにチャレンジしてみました。
プリントの内容は「教科書をまとめたもの」と「練習問題」
完全独自の問題ではなく、あくまでも教科書の内容をシンプルにしたものです。教科書の内容は、大学教授や現場の先生たちによって考えられて構成されています。だから、素人が適当に考えたものよりも意味があります。教科書で授業をしていると出来るこどもは、どんどん問題を解いていってしまいます。解けるという満足感で話を聞かずに問題ばかり解いてしまい、大事な内容を理解しないで、「ただ問題を解いているだけ」できちんと学習できていないこどもを時々見かけます。再構成されたプリントならば、プリントに載っている問題しか解けないので、やるべき内容や確認したい事項を丁寧に進めていけます。プリントの内容が終わったら、分かっていない周りの友達に教えてあげたり、必要に応じて問題集に取り組んだり、ただ問題を解くだけという状況を減らすことができます。
また、教科書の問題数よりも平均して3倍以上出題するようにしています。練習問題で反復練習をして木曽基本の定着を図ろうとも考えています。こういった面からも準備には時間がかかりますが、プリントで授業するほうがいいところが多いと感じています。練習問題も1時間では解けないほど載せて、「プリントの問題全部を解く必要がない」ことを確認して、自分のレベルに合わせて問題数を考えることも確認しました。
「どうしたら学習しやすいか」を話し合う
単元ごとに「どうしたら学習しやすいか」をクラス全体で話し合いました。最初に「どうしたら勉強し妬くなり、学力が伸びるか、先生にアドバイスをしてください」と質問し、全員に答えてもらいます。それを編集して、その内容をもとにクラス全体で意見交換をします。負担が増えない程度でできることを少しずつ実践していきました。その中で参考になったものをいくつか紹介します。
- グループ学習だと緊張して学習できません。一人で勉強したい。
- グループで教え合いながらやる方が理解しやすいと思う。
- 答え合わせの時間まで待つ時間がもったいないから、先に答えがほしい。
- 考えるように同じ図をいっぱい載せてほしい。
のような興味深い内容があがりました。学びの共同体が一時期、流行っていて、グループ学習、4人組での学習があたりまえという風潮でしたが、グループ学習だと緊張して学習できないという意見をみたときは驚きました。まさにUDLのように、学び方を選べることを重要性を再認識しました。また、出来るこどもは答え合わせまでの時間が無駄だと感じていることも分かりました。図形で角度を求める問題などで、考えるように同じ図を2~3個載せてほしいという要望もあがりました。そこで、それらの要望を取り入れて授業をするようにしました。
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解答付きだと、こどもたちは答えを写したりしないの?
実践報告会などで実践報告をすると一番聞かれる質問が「答えを写さないの?」というものです。実際に自分自身も写してしまうのではないか心配しましたが、それはこどもをどこかで信用していないから、そういう発想に至るのだと思い、信じて託してみるようにしました。そうすると、クラスの中に1人か2人ぐらいは答えを写してしまうこどもが現れます。もっと多いと思いましたが、そんなことはありませんでした。答えを写してしまったこどもには「あなたのためになっているの?」と声をかけると素直に「分かりました」といい、やりなおしてくれます。こどもは学習ができた方がいいと理解しているので、そのように行動をなおしてくれます。
できるこどもたちは、各自で答え合わせを済ませて、さらなる学力向上のために練習問題を解いたり、他の学習をはじめます。ボケーッと待っているよりもこちらほうが効率がいいことは誰にでも分かることだと思います。また、数学の授業をしていると質問されるのは「答えは3ですか」みたいな答えを確認する質問が多いのですが、解答を掲載しているので、その質問はゼロになります。そのかわりに「なぜ、このように式変形するのですか?」と数学的な問いが出てくるようになりました。質問の質があがり、授業者としてうれしくなったのを今でも思い出します。
考えるための図をたくさん載せるようにした
数学のできないこどもからは、角度の計算をするときに、いっぱい同じ図があるといいと言われたので、紙面に余裕があるときは載せるようにしました。教科書には真似できないけど、プリントなら同じ図をたくさん載せることができます。考えるために役立つらしく、これも実践してみると、非常に好評でした。
評価基準を載せて、ゴールを意識する
UDL的にはゴールを意識させるのが大切なので、評価基準をプリントの最初に掲載します。それで自分自身がどの段階にいるのか理解することができたり、方向性が間違っていないかを確認したり、自己調整のために有効であると感じられました。評価するときにも、評価する側にも評価される側も分かりやすく、これがあるべき姿だと思います。