以前、日本LD学会の記念講演で次のようなものがあり、衝撃を受けました。
Students are not disabled or broken.Our systems are.
Katie Novak(ケイティ ノバック)
日本LD学会の第27回大会(新潟)
特別講演「アクセシビリティと取り組みが増すUDLの実践」より
写真撮影OKだったので、すぐに撮影しました。こんな風に考えたことはなかったので、とても新鮮でした。
UDLでいうカリキュラムとは…
カリキュラムといえば「教育課程」と訳されますが、学びのユニバーサルデザイン(UDL)でいうカリキュラムとは次の4点のことを指します。
- ゴール:学習指導要領に示されている基準をどう達成するかについて児童生徒が自分にとって意味のあるゴールを設定する。
- 方法・手段:全員が皆同じステップや方略で学習したり課題をしたりする必要はない。
- 教材:同じ目標にたどり着くのに全員が皆同じ教材や足場的支援が必要なわけではない。
- 評価:真実味のある評価は児童生徒それぞれに合わせて行われる。
英語では次のようになります。
- Goals:Students set meaningful goals about how to meet objective or standard.
- Methods:Not all students need to follow the same steps or the same strategies to learn the material or complete the same assessment.
- Materials:Not all students need the same materials,scaffolds,to reach the same objective.
- Assessments:Authentic assessments are personalized for students.
詳しくはこちらから
カリキュラムに障害がある
授業には様々な障害が隠れています。つまり、「評価」「教材」「方法・手段」「ゴール」の様々な場面に学びづらさが隠れています。
学習した内容の共通点や相違点を考えたとします。このときに、まとめ方がノートにまとめるという場合だとしたら、書字が苦手な生徒がいたときには、それによって学習のやりづらさが発生します。もちろん、プリントにまとめる、コンピュータを使ってまとめる、口頭での発表、紙芝居など、まとめ方はいくつもあってもいいはずです。校外学習(遠足)に行ったら、必ず作文、絵を描くなど、決まり切ったパターンがあり、文字を書くことや絵を描くことが得意であればいいのですが、それを苦手としている場合、正当な評価が得られない可能性があります。共通点や相違点を見つけて、きちんと考察できるなら、必ずしもノートやプリントにまとめなくてもいいはずです。
また、共通点や相違点を探す場合、教材がバラバラであってもいいはずです。例えば、「哺乳類」と「爬虫類」の違いを考える場合であれば、教材は統一する必要がありますが、視点を変えれば、「魚類」と「哺乳類」の比較でも問題ないはずです。その後に他と比較してもいいと思います。それの方が探求的な学習につながる可能性をありますし、自然な考え方です。また、自分の興味が沸いたものを調べた方が学習が深まる可能性があります。
外国籍の生徒がいた場合、日本語でまとめることの困難さがあり、母国語でまとめたっていいはずです。「一般的な生徒」「ふつうの生徒」は存在せず、かならず差があります。その差があることを前提にして考えないといけません。
また、評価がしやすいことを前提にされたテストの場合、正しく学習評価を取ることが難しく、現実的な問題があることもあります。記述式のテストだと採点するのが難しく、ルーブリックが必要になり、先生たちの負担感が増加します。だから、記述式のテストをやらない場合があり、表面的な評価になり、カリキュラムに障害が発生してしまうこともあります。
カリキュラムの障害とUDLの考え方
学びのユニバーサルデザイン(UDL)では、「障害があったり、壊れているのは子どもじゃない。私たちの制度の方だ。」という考え方で、カリキュラムに障害があるという認識です。
運動会や体育祭のあとには「感想」や「頑張った人」を文章でまとめることが多く、もっと得意な方法でまとめたほうがいいという考え方です。その得意な方法とは「新聞風にまとめる」「プレゼンテーションソフトの利用」「絵に描く」「写真や動画でまとめる」「口頭での発表」のどれでもいいはずです。
あくまでも、学習目標を達成するのであれば、どのような経路(ルート)を辿っても構いません。生徒のタイプをよく判断し、カリキュラムの障害を見つけられれば対処はいくらでも考えられます。すべての学習者がアクセスしやすい形であるべきです。学びのユニバーサルデザインはそういう考え方で、まずは先生たちのマインドセットを改めるべきだと思います。
まとめ
学びのユニバーサルデザイン(UDL)では、「障害があったり、壊れているのは子どもじゃない。私たちの制度の方だ。」という考えで、カリキュラム(「評価」「教材」「方法・手段」「ゴール」)に問題があると認識しています。それらの問題点を探し出し、真正の学びとなるようなマインドセットが必要である日々の実践の中から感じています。