はじめに
「Universal Desigh for Learning」に感銘を受け、Universal Desigh for Learning(以下、UDLとする)を意識して授業改善をしました。「自分の夢を追い求め、目標に向かって伸び合う生徒」の育成をめざし、研究に取り組んできました。
研修でUDL(学びのユニバーサルデザイン)を学び、様々な指導方法について実践を進めてきました。生徒は変化の激しいこれからの時代を生き抜くためには「目的を持ち、やる気のある学習者」「学習リソースが豊富で、知識を活用できる学習者」「方略的で目的に向けて学べる学習者」つまり「学びのエキスパート」でなければなりません。「学びのエキスパート」になるためには、「安心して学習できる環境づくり」と「主体的な学び」の実現が大きな柱となると考えました。
そこで、研究を充実させるために授業実践としては、次の6点を意識しました。
チェックリスト
- ICT機器の利用
- ヒントカードの利用
- 授業の構造化
- 各自での学び方の選択
- 得意な方法で学びを深める学習形態
- 協同学習
数年の研究を続けました。教員も生徒も意識に大きな変化が見られ、授業改善が進み、生徒も確実に学びのエキスパートに少しずつ近づいているように感じられました。生徒観察を行い、そこからスタートした授業改善は、スピード感を持って行うことができています。これからもUDL的な視点を持ちながら、授業改善を行っていきたいと思います。これらの実践を通して、授業アンケートの結果や様々な教育活動における表現活動の様子等から、生徒の成長に研究の成果を感じているところであります。また、学力学習状況調査の平均正答率も県の平均を上回った結果が得られています。
UDLで実践していった最初の3年間
1年目は「生徒に差があること」が前提であるという考え方から、生徒の学び方の特性を考え、「視覚・聴覚・運動感覚」を意識した提示の方法や協同学習的な視点でグループ活動の在り方について研究を進めました。全職員が年1回は授業公開を実施しました。
2年目は生徒の主体性が少しずつ感じられるようになり、生徒が自己調整をしながら学ぶことを意識しました。生徒自身がオプションを利用できることを意識した授業改善、協同学習の視点を参考に意図してのペアワークや4人班を利用するような授業展開や教材の工夫を実践しました。生徒は自ら判断して取り組むようになりました。
一方で、グループ活動が「活動あって学びなし」のような状況であったり、4人班全員が主体的に学ぶことの難しさを感じたり、課題も見え始めてきました。生徒の自己モニタリングする能力が低いと感じることもありました。そこで、3年目は「学びのエキスパート」を目指す生徒の育成、オプションを自ら選べる生徒の育成、クラス全員のステップアップを意識できる生徒の育成を重点とし、研究を進めました。
生徒に差があって、各自のペースで学習する
実践を初めて「生徒に差があること」が前提であるという考え方に行きつき、生徒の学び方の特性を考えて、「視覚・聴覚・運動感覚」を意識した提示の方法や協同学習的な視点でグループ活動の在り方について実践を進めました。
生徒の主体性が少しずつ感じられるようになり、生徒が自己調整をしながら学ぶことを意識しました。生徒自身がオプションを利用できることを意識した授業改善、協同学習の視点を参考に意図してのペアワークや4人班を利用するような授業展開や教材の工夫を実践しました。生徒は自ら判断して取り組むようになりました。
一方で、グループ活動が「活動あって学びなし」のような状況であったり、4人班全員が主体的に学ぶことの難しさを感じたり、課題も見え始めてきました。生徒の自己モニタリングする能力が低いと感じることもありました。そこで、3年目は「学びのエキスパート」を目指す生徒の育成、オプションを自ら選べる生徒の育成、クラス全員のステップアップを意識できる生徒の育成を重点とし、実践を進めました。
よりよい実践にするために
ICT機器の利用→板書の時間を削減し、考える時間を捻出する。
ヒントカードの利用→自分で選び、利用する。出来ない生徒にも教員が手渡し、思考を促す。また、既習内容と学習内容をリンクさせるためにも利用できる。ただし、配付のタイミングが難しく引き続き検討が必要である。
授業の構造化
→生徒が本時の目標を確認しながら、自己調整しながら、目標達成に向けて努力ができる。
各自での学び方の選択
→個人で学ぶ、友達と学ぶ、先生に相談するなど、各自のタイミングで学び方を選ぶ。主体的に取り組めるようになった。
得意な方法で学びを深める
→文章にまとめるだけではなく、絵を利用するなど得意な方法で理解を深める。主体性につながる。
→ただグループ活動を行うのではなく、意図を持ってグループ活動を行う。全員ができるようになるという視点があれば、グループにこだわらなくても協同的な取り組みは十分にできる。
子どもの姿から見た成果
(1)授業アンケートの結果から
研究を始めてから定期的にアンケートを実施し、その変移を確認しているが、大きく数値を伸ばしている。
項目1:私は授業に意欲的に取り組めている。
(そう思う、どちらかといえばそう思うの合計の割合)
H29年10月 | H30年2月 | H30年5月 |
87.9% | 90.8% | 94.7% |
項目2:先生の授業は自分に合った学び方を選べる。(そう思う、どちらかといえばそう思うの合計の割合)
H29年10月 | H30年2月 | H30年5月 |
60.2% | 68.5% | 85.6% |
項目3:先生は授業以外の学習の場を設定している。(そう思う、どちらかといえばそう思うの合計の割合)
H29年10月 | H30年2月 | H30年5月 |
69.4% | 76.4% | 90.5% |
(2)総合的な学習の時間での活動から
自分たちで考えて、判断し行動するようにみんなで指導できたと感じています。校外学習では事前学習で学んだことから出てきた疑問点を課題として設定し、各自で課題探求学習に取り組めていました。また、発表では紙芝居というテーマで実施したが、提示の仕方を工夫して魅力的な発表になりました。UDL的な視点が生徒側にも伝わっているように感じられました。
また、職場体験学習では各自の興味のある体験場所を考えて選び、それぞれで課題の設定を行いました。職場体験当日では充実した体験になり、まとめ学習では各自で発表したい形を考えていきました。タブレットPCやプレゼンテーションソフトでまとめた生徒、紙芝居、ポスターセッション、クイズ形式などそれぞれが工夫して取り組み、下級生に職場体験で学んだことのプレゼンテーションを行いましたが、非常に好評でありました。生徒の自信にもつながっていました。
資料編
・学びのユニバーサルデザイン(UDL)ガイドライン version2.2(The Universal Design for Learning Guidelines Graphic Organizer)
・UDL実践者の成長のルーブリック(Novak Education)
・UDLの書籍は英語のものが多く、日本語では存在するのは、以下の書籍しかないと思います。
UDL 学びのユニバーサルデザイン ークラス全員の学びを変える授業アプローチー(東洋館出版社)