以前、大学院の准教授に授業観察を行い方を教わりました。そのときに、とても印象的だったのが「板書」でした。先生が書いたものをノートに写すだけですが、これが「カリキュラムの障害」になっています。当時、その准教授に言われて、生徒たちがどのようにノートを写しているかだけを1時間観察しました。そうしたら、当たり前のようにノートを写せる生徒が半数以上いましたが、10名程度はきちんと写せていないことが分かりました。
- ノートを写すことができるが時間がかかりすぎている生徒(ワーキングメモリーが少ない)
- 準備に時間がかかり、写すことに精一杯でただ写しているだけで学習内容を理解できていない生徒
- 写す量が多すぎて、集中力が持続しない生徒
こんな感じの生徒がいました。ノートを写すのは当たり前の作業だと思っていましたが、それが間違いでした。
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20分間、黒板に書き続ける社会の先生
研究授業で参観した社会の先生は、生徒の活動はなく一方的に説明をして、最後の20分間で黒板に内容をまとめ、生徒が黒板を写して終わるという授業でした。
一方的に説明されても、生徒がアウトプットすることはほとんどなく、実際に理解できている生徒は一部であるように見て取れました。その後に説明もなく、ただ黒板一枚分に書かれた内容をノートに書き写す授業では黒板を写すのが得意ではない生徒には厳しい授業になります。実際に、一方的に説明しているタイミングで8~10人がウトウトしていました。
書き写して学力がつくのであれば、教科書を丸写しをするべきです。
キーワードしか書かない理科の先生
理科の先生で理科的な知識があり、話を聴いていると、とてもおもしろい授業を展開していました。だけど、黒板に書いているのは「電気分解」「イオン」「気体発生」などで、特にノートを写すような指示もなく、生徒が各自でまとめていました。できる生徒にはいい授業のように見えましたが、理科を苦手としている生徒は、キーワードしか書き写すことができずにいました。授業後に、その苦手な生徒に「今日、学んだことは何?」と質問すると「電気分解」としか答えられませんでした。
自分でまとめることができない生徒には、厳しい授業となっていました。ノートを取ることの難しさを強く感じました。
必要なもの以外は写さないと話し合いで確認しました
単元ごとに、クラス全員で「学力がついたのかどうか、今回の学習が効果的だったのかどうか」「さらに学力をつけるために、今後、どう工夫すればいいのか」を話し合いました。何回かある話し合いのときに「ノートの取り方」について、みんなで意見交換をしました。
そのとき、「ノートを写しても学力はつかない(賢くならない)」「もっと考えないと学力はつかない」というような結果になりました。どうやったら、ノートを写す時間を減らせるのか、さらに話し合いを続けました。「先生が内容をまとめたプリントを配ってくれればいい」というような意見がたくさん出てきました。しかし、それでは「まとめた本人の先生は学力がつくが、まとめられたプリントをもらっても学力はつかない」と反論しました。それには理解をして「考える授業」を目指すということだけが共通理解できました。すごく大きな一歩だったと今では感じています。
写す時間を削減するために、プリント学習を始めました
教科書の内容を再編集し、問題演習量を増やし、考えた内容を共有するという授業を目指し、プリントを作成することを意識しました。事前に話し合いをしっかりと行っていたので、スムーズにプリント学習に移行することができました。
書き写し時間を減らし、その時間を問題演習に回しました。同時に答え合わせの時間を短縮することも意識しました。そうすると問題演習量が3倍になりました。授業中にボーッとしている生徒はいなくなりました。全員が自分のレベルにあった問題を真剣に解いている姿が今でも印象に残っています。
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プリントをiPadで黒板に写す
Wordで作ったプリントをPDFにして、iPadのアプリに転送し、プロジェクターで黒板に映し出しました。これは以前研修でお世話になった国立大学教育学部附属中学校の先生たちがそうしていたので、思い出して真似しました。
黒板に書いたり、それを写したりする時間を減らすことに成功し、その時間を考える時間に割り当てることができるようになりました。授業改善が効果的だったことを感じられ、自信にも繋がりました。