以前は授業は先生の説明が分かりやすくて、面白ければいいという風に考えていました。一斉授業型の塾で講師をしていたときの影響なのか、ずっとそう考えていました。だけど、そうではないことに気がつきました。校内研究主任を数年やっていたとき、研究授業を年間で30本近く参観していて、分かったことは次のようなことでした。
- ノートを上手に写せない生徒がいる
- ノートを写すのに夢中で話が聴けない生徒がいる
- 分からないときに分からないと言えない生徒がいる
ここまで差があるということを理解していなかったのを恥ずかしく思いました。当時は「教え方を変えないといけない」「先生として考え方が間違っていた」と強く感じたことを今でも鮮明に覚えています。そこで、どのようにUDL(学びのユニバーサルデザイン)の考え方を参考にしながら、授業改善をしました。
詳しくはこちらから
ノートを上手に写せない生徒がいる
ノートを写すのは誰にでもできることだと考えていましたが、授業時間に生徒のノートの取り方だけを1時間ずっと観察していました。
そうしたら、書字を苦手としている生徒がいて、書き写すことそものに時間がかかっていることもありました。漢字が上手に書けずに、漢字の書き方を確認して時間を浪費していることもありました。
また、ノートを取っているときに前で話をしている先生の位置をおおよそ確認して、次に書くところを確認します。しかし、その場所がスムーズに分からない生徒もいました。ノートをとっていて、顔をあげて、キョロキョロするのです。つまり、写すべき場所が一瞬で分からないのです。
授業観察をしていて、ノートを写すだけの作業にもかなりの差があることが分かりました。たまたま参観した社会の授業では、50分授業で35分間板書を写しているという授業もありました。ノートを取ることが苦手な生徒にとっては厳しいものになっていたのは間違いないと思います。UDLの考え方にあるように、生徒の学び方は多様であることを体感できると授業改善がより一層進むと思います。
ポイント
授業中にノートを取る時間は少ないほうがいい。ノートを取るより、学んだことを書く方がいい
ノートを写すのに夢中で話が聴けない生徒がいる
前述のとおり、ノートを写すのに個人差があります。先生の話を聴きながらノートを写すとなると、さらに差が出てきてしまいます。
ノートを取っている最中に「ノートを写し終わったら、90ページの問3の問題やってください」と声をかけます。その後に「何ページやるんですか?」と質問する生徒がいます。たまたま聴いていなかったということもあると思いますが、「何ページですか?」のような質問を何回もしてくる生徒がいます。おそらく、書きながらだと話が聴けないタイプなのかもしれません。
書きながら話が聴けないタイプの場合、話をした内容(聴覚情報)は伝わりづらい可能性があります。だから、提示の仕方は増やすのが大切だと思います。毎回、黒板の端に「90ページ問3」と書いておけば「何ページやるんですか?」という質問はなくせると思います。あたりまえのことですが、「聴覚情報」と「視覚情報」の両方を提示することが大切だと思います。まさにUDL的なところだと思います。
ポイント
学び方は多様だから聴覚情報と視覚情報を常にセットで提示する
分からないときに分からないと言えない生徒がいる
分からないと言えれば、誰かが助けてくれます。しかし、分からないと言えない生徒は静かに困っています。そういう生徒がいることを常に意識しているかどうかというのもポイントになると思います。
例えば、ノートを腕で隠しながら書いている、教科書をパラパラめくっている、何もしないでボーッとしているなど。じっくりと観察していると、それぞれ困った様子が分かるようになってきます。「分からない」と言えればいいのですが、静かに困っている生徒を見つけられるかが大切です。生徒をよく観察して見つけられるようにするしかありません。困っている生徒に丁寧に支援を続けていくと時間はかかるかもしれませんが「分からない」と表現出来るようになってきます。保護者に困ったときにどういう風になるか確認してみるのもいいかもしれません。
ポイント
静かに困っている生徒を見つけられるかどうか、生徒をよく観察する